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Shige's Photo Diaryに登場する曲を中心に音楽についての四方山話を綴ります


by shigepianoman2

Waltz for Debby

Richie BeirachやEnrico Pieranunziのことを、Evans系のピアノなどと記事に書いておきながら、その本家のことはあまり書いていませんでしたね。やはり、Bill Evansのアルバムを記事にするのは思い入れがあるだけに、緊張します。ああ~ここまでの道は長かった。さて、それでは決心して・・・


Waltz for Debby
Bill Evans Trio / Riverside



ジャズ好きの方には、もう説明は要らないかもしれませんね。「ひとまずジャズ聴いてみたいんだけど何がいい?」と聞かれたら第一の候補に挙げるのが「Waltz for Debby」です。

1961年のBill Evans TrioのVillage Vanguardでのライブ演奏はEvansのジャズの一つのマイルストーンともいえる歴史的な演奏ですが、その中でも特に最高とされているのが6月25日に録音されたこのアルバムです。

このアルバムでのBill Evans Trioの演奏は、Bill Evansのピアノトリオのスタイルの一つの頂点を極めたものだといえます。ベースのScott Lafaro、ドラムスのPaul Motianとの呼吸はぴったりで、スリリングなインタープレイはまるで音楽で会話しているかのようです。「なぜかベースやドラムの音がピアノの音に絡むように聴こえる」、そう思った方はもうEvansの奥深い世界にはまり始めています。

人の声、グラスの音に混じってMy Foolish Heartが静かに流れはじめ、ジャズクラブの空気に自然に引き込まれていきます。そして次のWaltz for Debbyへ・・・僕にはこの瞬間の素晴らしさを語る言葉が見つかりません。最初にフリーテンポで演奏されるピアノとベースのデュオは絶妙のタイミングで絡み合い、いつ聴いても戦慄が走ります。その後、Detour Ahead、My Romance、Some Other Time、Milestonesと一気に極上の時間が流れていきます。

最高のパートナーであるLafaroとの出会いがこの名演奏を生みました。しかし、運命というものは時に過酷なものです。このライブのわずか10日後、Scott Lafaroは交通事故で世を去りました。27歳でした。Evansの悲しみは如何ばかりのものだったでしょうか。至上の演奏の背後にある人生の光と影、まさにジャズそのものだといえましょう。

ジャズに興味がなくてもいちどは聞いてみるべき名盤だと思います。このアルバムのジャケット写真は写真としても秀逸です。
by shigepianoman2 | 2006-10-23 22:21 | Jazz