Shige's Photo Diaryに登場する曲を中心に音楽についての四方山話を綴ります


by shigepianoman2

The Water is Wide

忙しくてこちらのブログは休眠状態でしたね。今日はひさびさのアップです。フュージョンを続けていたのですが、今日は小休止。メインブログの関連記事をアップします。

The Water Is Wide
Orla / Manhattan



The Water is Wideはあまりに有名な曲ですね。ケルトの伝統曲としてアイルランドやスコットランドで、そして大西洋を渡ってアメリカでも歌われる民謡です。哀しい恋の歌であることもこの歌が世界中で愛される理由のひとつでしょう。

この曲はちょっと思いつくだけでもボブ・ディラン、ジョーン・バエズ、カーラ・ボノフ、リズ・カーライルなど多くのアーティストが歌っています。試しにiTMSなどの音楽配信サイトで検索してみてください(Theをつけない場合もあるのでWater is Wideで検索するといいでしょう。)。アメージング・グレイスやアヴェ・マリアなどと同じようにたくさんヒットしてきます。

さて、誰のThe Water is Wideにしましょうか。この歌は水辺で静かにつぶやくように、それでもしっかりと聞こえてくるように歌ってくれないと。女性でソプラノかメゾソプラノあたり。バックはピアノかアイリッシュハープやティンホイッスル、バイオリンとの組み合わせでもいい。これに合致するのは・・・よし、決めた!今日はÓrla Fallon(PCによっては最初の文字が表示できないかもしれません。英語風にOrla Fallonとも表記しておきましょう。)のバージョンを紹介しましょう。Órla Fallonといえばリバー・ダンス出演者でもあるケルト音楽の実力派。世界的ヒットとなった女性ボーカルユニットのCeltic Womanのメンバーの一人といえばおわかりでしょう。このアルバムではアイリッシュハープとともにすんだ歌声を聴かせてくれます。

The water is wide, I can't cross o'er
And neither have I wings to fly
Give me a boat that can carry two
And we shall sail, my love and I

Oh love is gentle and love is kind
And love's a flower when first it's new
But love grows old and waxes cold
And fades away like morning dew

There is a ship, and she sails the sea
She's loaded deep as deep can be
But not as deep as the love I'm in
I know not how I sink or swim

The water is wide, I can't cross o'er
And neither have I wings to fly
Give me a boat that can carry two
And we shall sail, my love and I

海はあまりに広く越えられない
空を飛ぶ翼もない
二人を運ぶ船がほしい
私たちが海を渡る船がほしい

愛は麗しく、優しく
始まる時は花のように美しい
でもすぐに色褪せ、凍えて
朝露のように消えてしまう

海を進む船
積荷は重く、ずっしりと沈んでいるけれど
それにもまして私の愛は深く
この海を泳げるのか、沈んでいくのかわからない


古い民謡なので、歌詞にはバリエーションがあります。また、もっと長いのもあります。ここではご紹介したOrlaの歌う歌詞を訳しました。

もし心が疲れているならGeorge Skaroulis(アルバム「Second Nature」)、ギターと共にしっとりと聴きたいのであればLiz Carlisleのバージョン(アルバム「Half & Half」)もいいかもしれません。それにカーラ・ボノフのも・・・たくさんありすぎてもっと書きたくなりますね(笑)。

アイルランドの音楽は、美しい旋律、基本的には日本の歌とも共通するペンタトニック(注)で構成されていることから、われわれにも親しみやすい音楽となっています。庭の千草、ダニー・ボーイ、春の日の花と輝くといえば皆さんもご存知でしょう。

ケルト人の歴史は苦難に満ちたものでした。ヨーロッパ大陸の先住民でありながら、ゲルマン人の圧迫を受け、フランスやスペインに移動、やがてローマに征服されました。以前にブリテン諸島に渡ったケルト人もアイルランドやブリテン島の西の一部、スコットランドを除いてローマに、その後はローマの衰退とともにやってきたアングロサクソン人に支配されました。そのため、その民族と言語はアイルランド、スコットランド、ウェールズ、コーンウォルに現存するのみとなりました。苦難はそれだけではありません。19世紀半ばには、アイルランドはジャガイモ疫病による大飢饉に襲われ、200万人がアメリカなど世界各地に移住します。この歌は悲しい恋の歌ですが、聴いていると海を渡り続け、海の向こうの故郷に思いを馳せたケルト人の苦難の運命が重なってくるような気がしてなりません。

さあ、今日はアイリッシュウイスキーでも飲もうか、世界最古の蒸留所で生まれたブッシュミルズ・シングルモルトをストレートで。心にはコーンウォルの瑠璃色の海を←いったことないけど(笑)


注:ペンタトニック=五音音階のこと。四度と七度(ファとシ)を使用しない四七抜きはその代表でしょう。たとえば蛍の光(スコットランド民謡)は相対音階でソ|ドドドミ|レドレミ|ドドミソ|ラというようにファとシがありません。もちろんこれは原則であって、The Water is Wideではファもシも使われています。
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by shigepianoman2 | 2007-02-03 16:11 | Traditional